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コザクラインコさんのクリプトスポリジウム症

今回は、小鳥さんのクリプトスポリジウム症についてお話します。

クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)とは、胞子虫類に属する原虫で、腸管の上皮細胞の微絨毛に侵入して寄生します。
クリプトスポリジウムには多くの遺伝子型があり、ヒトやウシさん、ネコさんなどの哺乳類にも寄生する種類もありますが、小鳥さんには主に、C.meleagridis
C.baileyi
C.galli
Avian genotype Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ
などが寄生するとされています。

分裂増殖(無性生殖)で「メロゾイト」と呼ばれる細胞を形成したり、合体(有性生殖)で直径4~8μmほどの球形の「オーシスト」を形成して、小鳥さんの体内で増殖します。
オーシストとは、クリプトスポリジウムが環境中に排出される際の形状のことで、クリプトスポリジウムのオーシストの中には、「スポロゾイト」という感染性のある胞子が4つ入った形が特徴です。

クリプトスポリジウムは多くの小鳥さんに感染しますが、特に、コザクラインコさんに多い傾向があります。その他、オウム目のオカメインコさん、マメルリハさんなどでも感染が報告されていますが、ブンチョウさんに感染することは極めて稀とされています。

主な感染経路は、感染した小鳥さんのうんちに含まれるオーシストで、ごはんやお水、土壌などと一緒に体内に取り込んでしまうことで生じます。
湿った環境の中で最長で6ヶ月ほど感染力を維持することができる、との報告もあり、お水や挿し餌器具の使い回しなどによっても、同居の小鳥さんからもらってしまうことがあります。
クリプトスポリジウムのオーシストは100個以下の少数の摂取でも感染が成立するとされており、注意が必要です。

通常は、免疫力の低いヒナさんやPBFD(Psittacine Beak and Feather Disease、オウム類嘴羽毛病)などの免疫疾患の小鳥さんでの発症が多いとされていますが、コザクラインコさんは2歳以上で発症することが多い傾向があります。

発症すると、クリプトスポリジウムの種類や小鳥さんの品種によって、胃腸、呼吸器、泌尿器に症状がみられます。
胃Cr症(胃クリプトスポリジウム症)、腸Cr症は、コザクラインコさんで多く、
・食欲不振、食欲の低下
・吐き気でお口をパクパクさせたり、嗚咽がみられる
・泡状の粘液やごはんを吐く
・抗生物質を服用しても治らない軟便、下痢が続く
などの症状がみられます。

その他、呼吸器Cr症、尿管Cr症は、
・沈うつ、止まり木から降りてうずくまっている
・くしゃみや鼻水などの呼吸器症状
・結膜炎
・ハァハァゼーゼーした呼吸
・脚弱により止まり木から落下する
・腎不全による痛風
などがみられ、命に関わることもございます。

クリプトスポリジウムを完全に駆虫できるお薬はなく、対処療法が主となります。

クリプトスポリジウムは免疫が弱った際の日和見感染が多いため、日頃から、栄養バランスの取れたごはんや、清潔なお水、小鳥さんの生活環境を清潔に保つことがとても大切です。
当院では、定期的な健康診断をおすすめしております。
ごはんの食べが悪い、止まり木から降りて元気がない、など、気になる症状がございましたら、できるだけ早めにご相談ください。