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ブンチョウさんのトリコモナス感染症

梅雨入りの時期になりました。
今回は、ブンチョウさんのトリコモナス感染症についてお話しします。

トリコモナス症とは、トリコモナス(Trichomonas gallinae)という原虫によって生じる感染症です。
小鳥さんに感染するトリコモナスは、ヒトの性感染症のトリコモナス(Trichomonas vaginalis)とは別種です。

トリコモナスは、鞭毛と、波動膜という細胞体と鞭毛の間の波状の薄い膜を使って運動や栄養の吸収を行っています。
トリコモナスは多くの小鳥さんに感染しますが、特に、ブンチョウさんに多い傾向があります。その他、ハトさん、オカメインコさんにも寄生しますが、セキセイインコさんでは稀です。

トリコモナスは、酸に弱く、胃液で失活してしまうため、胃より上部の口腔内、そ嚢、食道に寄生して増殖します。
主な感染経路は、お母さんがヒナに吐き戻してごはんをあげることで、お母さんのそ嚢内に寄生したトリコモナスをごはんと一緒に体内に取り込んでしまうことで生じます。
また、トリコモナスは乾燥に弱い反面、水中や湿った環境では長時間生存が可能なため、お水や挿し餌器具の使い回しなどによっても、同居の小鳥さんからもらってしまうことがあります。

免疫力の低いヒナさんでの発症が多く、特に、おうちにお迎えした直後~数週間の間は、環境の変化による緊張やつかれなどから、体調の変化が生じやすい傾向があります。
発症すると、軽度の場合は、
・食欲不振、食欲の低下
・口腔内の違和感や粘液の増加からお口をクチュクチュする
・あくびのようにお口を大きく開ける
・粘液を吐く
・首を頻繁に振る
などの症状がみられます。
症状が悪化して二次感染を起こすと、
・アブセスの形成(口腔内の粘膜の一部が破壊されて膿が溜まること)
・くしゃみや鼻水などの呼吸器症状
・結膜炎
・ごはんの通過障害、吐出
・膨羽、止まり木から降りる
・下顎や頸部の突出
・ハァハァゼーゼーした呼吸
などがみられます。ブンチョウさんは、お耳から風船のような空砲が突出したり、嘴が腐敗して取れてしまうこともあります。

診断は、ソノウ検査を行います。
万が一、トリコモナスを発症してしまった場合、トリコモナスの虫体自体は、抗原虫薬などのお薬で駆虫ができますが、二次感染で膿が溜まることによって後遺症で命に関わることがあります。

トリコモナスは重症化する前に早期発見、治療がとても大切です。
当院では、おうちにブンチョウさんをお迎えした際は、健康診断としてそ嚢検査をされることをおすすめしております。
また、ごはんの食べが悪い、止まり木から降りて元気がない、など、気になる症状がございましたら、できるだけ早めにご相談ください。